《猫の避妊、去勢手術の必要性》

「猫の避妊、去勢手術の必要性」         ♂猫=オス猫 、♀猫=メス猫

ペットショップで買われた子猫でも、目の開かないころからミルクを与えあなたを親のように慕っていた子猫でも生後6ヶ月近くになりますと突然、本能が目を覚まします

 子孫繁栄のための行動が始まります。あるものは異性を探しに脱走し、外出できないものは夜、昼を問わず赤子の泣くようでもあり物悲しいな鳴き声のような独特の声で彼女、彼を呼ぶ行為、スプレーという匂いをつける行動が始まります。その結果、慣れない外出で交通事故、咬傷、妊娠。部屋では家具への尿のマーキング、鳴き声による飼い主様の寝不足、御近所からの苦情など、猫と同居できない状況になることがあります。

  オス猫は、妊娠しないからということで、家と外を出入り自由な飼い方をしますと、メス猫より行動範囲が広いので、交通事故にあうことが多いような気がします。

  他の猫と喧嘩をしたりや他人の家へ侵入したり、他人の庭で排尿、排便するなど、外での行動で他人に迷惑をかけている場合があるのではないかと思います。

 捕獲され、処分されたり、危害を加えられる危険性もあるかもしれません。早期に去勢されることをお勧めします。

 ①メス猫は交尾排卵動物です。(発情期に入ると卵子は交尾するのを待っています。交尾するまで排卵しません。交尾して初めて排卵するので妊娠率が非常に高い生き物なのです。ほぼ1回の交尾で妊娠します。交尾で排卵し発情が終了します。)

 ②子宮は左右にありヒトの卵管に相当する部分までが子宮であるために1回の出産で4、5頭出産します。妊娠期間は約2ヶ月。年に数回発情します。授乳中でも妊娠します。

 ③年齢が生後10年過ぎても繁殖することがあります。

  生涯で100頭以上生むことができます。 

 ④冬季は積雪時の発情が多いように感じます。

倉庫にいた猫に、軽い気持ちで餌を与えているうちに大所帯になった話は珍しくありません。

避妊手術は病気の予防としては子宮、乳腺ガンの予防になるといわれています。

去勢、避妊すると肥満することがあります。

♀猫の避妊手術は全卵巣と子宮の全部または一部の摘出を全身麻酔下で行います。

♂猫の去勢手術は左右の睾丸の摘出を全身麻酔下で行います。

   

「滅菌と消毒」 

 滅菌の重要性は、人の医療関係の方々しか理解していただけないと思います。

 身の回りには芽胞をもっているために鍋に入れて煮沸しても死滅しない細菌があります。この煮沸は消毒になります。

ヒトの医療では、すべての細菌、ウイルス、カビ類を死滅させる滅菌操作をしています。滅菌の方法は高温高圧によるものやエチレンオキサイドガスによる方法(ガス滅菌)などあります。

 関動物病院では、ヒトの手術と同じように、手術に使用しますガーゼや器具(ハサミ、ピンセット等)を滅菌器(オートクレーブ)に入れ、高温高圧(2気圧132度15分)で処理し細菌、カビ、ウィルスをほぼ完全に死滅させる滅菌操作をして手術に使用しています。手術器具の滅菌は、時間がかかりますが、この作業はペットの術後の健康状態や傷の状態に大きく貢献します。

 自宅での抗生剤の内服による投薬は不要です。犬、猫の避妊、去勢手術に関しては10年以上前から飼い主様の自宅での投薬を設定していませんが細菌感染を経験したことはありません。

 残念なことに、手術で一番大切なことなのですが、手術器具を滅菌をすることの重要さは、理解してもらえません。昭和時代には、滅菌しないで手術をする獣医はたくさん存在しました。滅菌器すら所有していない獣医がいました。細菌感染にはペニシリンとストレプトマイシンの合剤が問題を解決してくれると信じていたように感じていました。

 現在でも持続性抗生剤コンべニア注を注射してあるので投薬不要と他と差別化しているホームページを見かけましたが、実効性がありません。さらにこの注射液によるアナフィラキシーで死亡している公の報告もあります。

 滅菌を厳守しますので、術後の毎日の投薬は不要です。

 健康な犬や猫の体温は38度台と高くヒトより細菌感染には強い動物ですが、滅菌しない手術器具を使用して手術は、悪条件が重なると抗生剤の効かない全身の細菌感染、真菌感染による腹膜炎、皮下組織の感染性脂肪組織炎など厄介な状態になることがあります。

 滅菌の重要性を説きますと、空気中を浮遊する空中落下菌や皮膚の毛根内に存在する細菌で手術開始30分で術野は汚染されると反論する獣医がいましたが、手術開始時点で限りなく細菌を少なくしたものとの差は、その細菌の種類、数には歴然と差が出てくるのは当然だと思います。

(手術器具の消毒ではだめなのか?)

 消毒液の能書を見てもらえばわかりますが、腹腔内に使用する手術器具用の消毒液は存在しません。代表的なヒビテン、イソジン、などは健康な皮膚やごく浅い傷の消毒液であって、深い傷や器具の消毒には使用しません。消毒のレベルも低水準です。濃度によっては細胞の壊死をひきおこし炎症や痛みの原因になります。過度に傷をなめるようになります。

 さらに全ての細菌や、カビ類、ウイルスが消毒できるわけではありません。(資料写真)

 

  

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≪手術の前日の餌≫

 (前日の夜は通常通り餌を与えてください。日付が変わりましたら絶対に、餌は与えないでください。水を入れた容器は朝8時までかたづける必要はありません)   

 たとえば、手術日を11月5日としますと前日4日の夜23時59分まではフードは与えてもかまいません。日付が変わり、5日午前0時になりましたら、餌箱を片付けてください。水を入れた皿は朝8時まで、かたづける必要はありません。手術当日の5日の朝のフードは与えないでください。手術はお昼から開始しますので12時間の絶食になります。手術中は、胃の中は、空っぽです。

 理由は(麻酔中に胃袋に食べ物がありますと、体位によっては食べ物が、口の方に逆流して、誤嚥、呼吸困難になったり、腹と背中の距離が長くなり、卵巣を体外につり出すのに苦労します。当時の朝の絶食は危険率を下げるために必要なことです。)

 それではと、手術日、前日の夕方から絶食させますと、時間があまりにも長くなり、空腹のあまり、深夜にゴミ箱をあさったり、戸棚を開けて、菓子などをいたずらすることもあるのではないでしょうか。

また、手術当日の夜にフードを食べなかった場合は、48時間の絶食になってしまいます。

 ヒトの世界でも手術当日の朝は絶食するものの、水は当日の朝まで努めて、飲んでもらう方向に変わるつつあります。これは脱水による血圧の低下や腎臓の機能を維持するためのようです。

 

                                 

≪麻酔の方法≫

手術をするためには、痛みを感じないほどの深い麻酔と、手術が終了するまで麻酔が維持される必要があります。

ガス麻酔

 当院では麻酔時間に追われないように鎮痛、鎮静作用のある麻酔液を注射後、イソフルランガスによる全身麻酔を行っています。

 経費がかかりますが、麻酔ガスによる麻酔時間は気化器のダイヤルをOFFにするまでは、全身麻酔状態を維持することが出来ます。麻酔の深さは、気化器のダイヤルで調整できます。イソフルランという液体(エーテルのように常温で気化する薬品)を専用気化器を使用して酸素中の濃度を調整し麻酔の深さを調節します。動物による個体差がありますが、気化器のダイヤルで濃度を調整して手術に最適な状態に維持することができます。

 

 手術終了後、気化器のダイヤルをOFFにして酸素中のイソフルランガスの濃度を0パーセントの状態にします。イソフルランガスは呼吸とともに速やかに体外に排泄されます。耳をパタパタさせるなど、少し覚醒してきたらマスクを外し、外気を呼吸させます。覚醒時に光、音による刺激があると興奮期になることがありますので、適温で薄暗く静かな状態のケージに移します。手術後に短時間で血液中のイソフルランは完全に排泄されますが、併用した注射による鎮静作用が残っていますので手術後2時間ほど、もうろうとしてしています。
数時間後の夕方には十分に醒めています。
夕方にお返しする時点でふらふらしていたり、夢うつつ、または興奮している状態ではありません。 

 

 《入院について》

日帰り手術はヒトでも主流になりつつあります。

 午前中またはお昼に手術しますので夕方には麻酔は十分に覚醒しています。

 当院の入院室は、室内の温度はエアコンで管理し、ステンレスケージの床面の裏にはヒーターが設置してあります。

*飼い主様から見ると猫は一晩入院していたほうが安心だと考える方も多いと思います。それは入院中の猫は、おとなしくしていると想像されてるからだと思います。

 しかし現実には十分に麻酔が覚醒した猫は、深夜に、ケージから出ようとしてドアの隙間から手を伸ばしカギを外そうとしていたり、暴れていたりすることは、珍しいことではありません。なれない環境で尿、便を我慢している猫もいます。我慢しきれず慣れないケージで排尿、排便して体が汚れることもあります。飼い主様の期待通りに快適におとなしくしている猫は少数です。

遊びの「だるまさんがころんだ」のように人がいなくなるとケージの中で脱走しようと暴れていて見に行くとケージ内はシーツなどが散乱しているのですが何事もなかったかのように猫はじっとしています。

 見知らぬ場所に閉じ込められて不安でいっぱいではないかと思います

*麻酔が覚めた猫は、速やかに、住み慣れたお宅にお返したほうが、猫のためにも良いことだとおもいます。ヒトのICUのように24時間監視しているわけではないので入院させるメリットは少ないとおもいます。

 夜間の手術は原則行っていません。理由の一つは、夜間の手術は術後の監視が十分にできないからです。例えば夜7時~8時に手術をしたとします。夜12時になっても4時間しか経っていません。

 帰宅後、フードを普段通り食べたといわれることも多いようです。

  2018、2019、2020、2021、2022年度は腹帯を脱いだり、汚したりしたために交換したことが数件ありましたが退院後の健康上の異変はありませんでした。

 退院後の御質問は留守電にて対応しています。

 

化膿止め消毒など

皮膚の傷が治るまで8日ほどかかりますが、器具の滅菌を厳重にしていますので、お宅では通常は化膿止め等の内服薬を飲ませていただく必要はありません。体を細菌から守っているのは免疫です。化膿止め(抗生物質)ではありません。自宅での内服による投薬は不要です。避妊、去勢手術に関しては10年以上前から飼い主様の自宅での投薬を設定していませんが細菌感染を経験したことはありません。

 

 ♀猫は

 ※当院では通常は傷の消毒をしたりガーゼ交換に通っていただくことは、ありません。 しかし、不安な場合は猫をつれて来て頂ければ、診察と傷の確認をします。

  避妊手術した猫の腹の傷を保護するためにTシャツの生地で作った簡単な手製の服を着てお返しします。服は無料です。(服を脱いで、傷を舐めることも考慮して皮内縫合をしています。猫が傷をなめても化膿はしません。)

 

  術後8日以上(10日ほど)経ちましたら傷の確認をさせていただきます。抜糸します。

 

  当院で行っているメス猫の皮内縫合

 一般的に動物の手術傷が治癒しない原因は細菌感染を除いては、舌でなめたりすることで糸がゆるんだり、ほどけたりして左右の皮膚が離れたり、段違いになることが圧倒的におおく、これは修復の妨げになります。(傷の隙間を埋めるためにカサブタができるのです。) 

 ネコのざらざらした舌でなめれられると簡単に糸の結び目がほどけてきます。 皮膚から糸の結び目が見える単純結節縫合の方は簡単で時間がかからないのですがこれは、結び目が外にあるので結び目を猫がなめることには、無防備になります。そのためにエリザベスカラーが必要になったり、それではと、ステンレスの金属製ワイヤーで縫えば、ほどけないのですが、これでは縫い目が裂けることがあります。

 皮内縫合(埋没縫合)は、左右の皮膚の各層が固定されて、その上糸の結び目は皮下になりますので、なめることによってほどけたり、ゆるんだりすりことを防止することができます。

 

≪退院後は≫

☆退院当日は食欲はないことがありますが、皿に通常より少なめの餌と水の皿を与えてください。 翌日からは通常どおりの量の餌を与えてください。手術したからといっても腸などの消化器の手術ではないので、普段食べていたものを与えてください。特に過去に食べたことのないものは、与えないでください。

 退院後、自宅でしていただくことは、①屋外へは出さない。②水にぬらさない③餌、寝床など普段の生活させてください。④5日間は服を脱がさない。

⑤手術した当院としても、抜糸までは、元気にしているか心配しています。「食欲がない。ウンコをしないので心配。服を脱いだ。など」など、お聞きになりたいことがあればお電話でお問い合わせください。受付時間外は留守電になりますが、お名前と用件を録音していただければ、連絡します。傷を消毒したりカットバンを貼ることはしないでください。(猫が傷を舐めるきっかけになります。触らないでください。 )

 ♀避妊したメス猫は服(服帯)のために歩き方がおかしいことがあります。猫が腹帯に慣れてくると歩き方に違和感はなくなります。服には排尿、排便を考慮してありますが、もし尿、便などで汚れたら、新しいものに交換します。連絡してください。汚れを取るためでも、手術後2週間は絶対、シャンプーなど水にぬらさないでください。

 ♂去勢手術したオス猫は退院時には服は着せません。エリザベスカラーも不要です。糸は猫が舐めてほどけるように商品名、紫色のバイオシン太さ4-0の合成吸収糸を使い、ゆるく縫ってあります。この糸で皮膚を縫う第一の目的は手術終了直後に切った皮膚からの出血を防止するためであり、当日中に舐めてほどけても、問題ありません。中から臓器が出てくることはありません。このキズは糸で閉じておかなくてもキズ口がずれないで閉じます。睾丸中央の切開創は左右に傷が開く力がかかりませんので傷は開くことは少ないです。そのために縫合しない動物病院があるくらいです。万一 当院で縫合しました糸は猫が気にしないで舐めなくても数ヶ月後に糸は自然に脱落します。勿論、8日以上経過しましたら、抜糸できますので来院していただいてもかまいません。

オス、メス猫ともに手術後2週間は、水にぬらすことと、シャンプーは、禁止です。

☆過去に手術前日にシャンプーしてきた飼い主様が、いましたが、手術の際に術野の剃毛し、イソジンスクラブで洗浄をしますので、手術前のシャンプーは不要です。

 普段当院で手術しています猫は、飼い猫であっても生まれてから一度も洗っていない猫が大半です。猫は全身を毛づくろいをしますので意外にきれいです。猫の舌はスリッカーブラシの様にとげがあり毛づくろいに適した形になっています。

手術前日に猫を洗ってきて乾ききっていなかった場合はバリカンがかけづらく、長毛種においては毛玉ができていたり、洗体の結果、増えた毛づくろいのために毛球の嘔吐などありますので、7日前から禁止です。

猫の情報

夜行性。肉食獣。肉食獣は視野が狭く道路を横断する際に進行方向しか見えないので交通事故に会いやすい。猫の妊娠期間約60日。1回の出産数3から6匹。発情回数3回以上/年。出産可能年齢生後6ヶ月~生後10年齢以上。生涯出産可能頭数100匹以上。☆雌猫は交尾して排卵すると発情は終了します。高い確率で妊娠します。

離乳年齢、生後30日齢から。乳歯が生え変わるのは、生後6ヶ月。妊娠可能年齢6ヶ月から。成熟年齢、生後1年。寿命13から15年が多い(長生きした猫の話は広まりますが極少数です。)。誕生時の重さ60g?。生後7日100g?。生後30日体重500g?。生後50日の体重1kg?、成熟時の体重♂3kg♀2.4kg。生理、交尾排卵(出血はしない)。成猫の排便2日で1から2回。尿2回/日。シャンプーのこと、猫は、一般的に水にぬれることを嫌います。生涯1度も、シャンプー、水浴をしない猫は多いが、これらは皮膚病になることは少ない。但し、長毛種は、毛玉ができるので、定期的なトリミングは必要です。(?は統計ではなくて、私の経験上のもので信頼性に欠けることもあります。)

「家を留守にするとき」

旅行などで家を留守にするときにペットホテルなど他の場所に預ってもらう方法がありますが、猫を対象としたペットホテルは、少ないようです。これは、猫は①場所に慣れるまで餌、排泄をしない(私の知り合いで10日間猫を預かりその間、食べない、水も飲まない、排泄しなかった猫が、自宅に帰って何もなかったように普段通り生活していた話があります。)②ペットホテルのケージの出し入れの際に脱走、逃亡の危険がある。室内であっても捕獲が難しいことがあります。③「借りてきた猫」が不安のあまり豹変することは珍しくありません。猫は家に住むといわれるように居る場所が変わることは猫にとっては「最大の不安」である場合もあります。テスト期間としてお出かけしないでペットホテルで預かってもらい、反応を観察してもらうのもよいと思います。

 理想的なのは、飼い主様の留守の間、信頼できる友人、親せきの方が1日1~2回留守宅へ来てもらい餌、水の交換、トイレの掃除をしてもらうと猫にとっては安心でしょう。

信頼できる友人、親せきの方がいればよいのですが、留守を任せるので警備会社の業務として確立してもらえば飼い主様も安心ではないかと思います。玄関のカギを預かり戸を開けた途端、猫が脱走した、留守の間に火災があったなどの事故にも対応できれば理想的です。

 また新築、改築される際には、外からも餌の補充とトイレの清掃できる構造にすると便利です。狭い空間に猫を閉じ込めるのではありません。

富山市 関動物病院

 〒930-0032

 富山市栄町2-2 

 ℡076-425-7403 

※おかけになりました通話はSDカードに録音させていただいています。

 対象動物 飼犬と飼猫

 受付時間

月曜~金曜日

 午前9時~12時00分 

 午後3時~6時30分

土曜日

 午前9時~12時00分

 午後3時~5時

 

☆日曜祝祭日は終日休みます。